磨き中

よく「ブレードをミラー仕上げをする時にポツポツした穴(ピンホール)がでて困っている」と、いろんな方から相談を受けます。
これまで、プロ・アマ問わずいろいろな人に対策や原因について話を聞いてきました。

ピンホールの原因の主な説は、以下のものに集約されます。
・鋼材の性質説:「鋼材によってピンホールがでやすいものがある」
・鋼材の製造工程説:「製造工程で気泡的なものが発生したのではないか」
・脱炭説:「磨いているときに炭素が脱落してしまう」
・高温説:「リューターの摩擦熱で高温になって脱炭する」

皆に聞くと、どれも話に信憑性があるし、いずれも正しいように思います。
ただ、僕はピンホールが出る原因のほとんどは磨きが不十分による「磨き残し」ではないかと思っています

それを証明するため、ひとつ実験をしてみることにしました。

逆にピンホールを出現させるにはどうしたらいいか?を考える

今回は「ピンホールを出現させるにはどうしたらいいか?」という逆転の発想でブレードを磨いてみました。


僕の仮説は、「ピンホールは磨き残しによって発生する」です。
そこで、今回の作業条件は、ひとつ。
・できるだけ適当に磨き、傷が残っていても気にせず次工程に進む

さて早速、実験の工程を紹介していきます。
1.磨き前の状態。ベルトで#220まで掛けてあります。
磨き前

2.耐水ペーパーを短冊状に切って磨いていきます。
短冊

3.超テキトーに傷が少しくらい残ってても構わず次工程に進んでいきます。
磨き中

4.これで#2000程度。傷は残ってるけど案外綺麗になってきました。ただし#220の傷もしっかり残っています。
#2000くらい

5.傷があろうと構わずにダイヤモンドペーストで磨くと… 見事!?ピンホールを再現することが出来ました。
ピンホール!

磨き残しがピンホールになる理由

僕が考えたのは、こんな理由です。

ブレードの黄色がもともとの研磨痕です。テキトーに磨くと、このように下地の傷が残ります。
ペーパーで消せた部分が灰色です。
ただ、これに気づかないまま作業を進めていきます。
原因説明1

更に細かい耐水ペーパーで磨いていきます。細かいペーパーの研磨痕が薄い灰色です。
黄色い部分の深さはおそらく一定ではないから、消えやすい部分と消えにくい部分があります。
ここでもきちんとキズを消しきらないと黄色い下地の傷は残り、それがピンホール状になってしまいます。
原因説明2

ピンホールが発生する原因はこれで説明がつきます。
じゃあ、ピンホールを防ぐにはどうしたらいいのか?
ズバリ、下地から順に根気よくキズを消していくしかないでしょう。
ひとつひとつの工程をきちんとこなしていくこと以外に美しいミラー仕上げを実現する方法はありません。

また、研磨痕が深い粗い番手の時ほど、より慎重にキズを消していく必要があります。
もし仕上げ後にピンホールに気づいてしまったら、その涙を拭いて#240ぐらいまで戻って再度磨き直してくださいね。ピンホールをリューターで消そうとしても時間とペーストの無駄です。諦めて手で磨いてください。

そして、そこまでやってもまだピンホールが出るようであれば、それはきっと素材によるものです。そしたらあんまり気にしすぎないほうがいいかもしれません。
そもそも日本のナイフメーカーのミラー仕上げは美しすぎるんですから。
 
 
 

5 thoughts on “ブレード研磨中に出るピンホールの原因は、ほぼ磨き残しじゃないか?:Knife-Hack

  1. SATOH より:

    こんばんは。
    なるほど、そういう事なんですね。思い当たるフシが多いにあります。

    それとも、理由はひとつじゃなく複数という事はないでしょうか。
    時間がある時に以下の実験してみて下さい。

    ミラーに仕上がったブレードに、更に高速でリュータを当てたらどうなるか。
    これをやれば熱問題は否定されると思うんです。

    アルミを高回転させて削ると素材がむしり取られるようにボロボロなるんです。柔らかく粘りのあるアルミだからで、固いブレードとは違うと思いますが念のため。

    1. knifekozo より:

      なるほど。たしかに。
      直感的にはミラーになってしまったあとに高温にしても大丈夫な気がしますね・・・

  2. lure-builder より:

    今まさに、ピンホールと格闘中です。とりあえず、#120で研磨して片面だけですが消えつつあります。しかし、手磨きなので気が遠くなりそうです。
    鋼材由来のピンホールは消えないあるいは消せないのでしょうか?

    1. knifekozo より:

      lure-builderさん>
      一つの番手ごとに確実にキズを消していけば、ピンホールに悩むことはありません。
      粗い番手のときほど大変な思いをしますから、今が踏ん張りどころです。諦めずがんばってください!
      鋼材ごとにミラーの仕上がり具合は違います。ピンホールというより模様があるような感じです。
      黒皮付きの鋼材から削っているのであれば、外側にはアバタのようなものがありますので、ある程度の厚みに薄くするまではピンホールは多くでますね。

      いずれにしてもピンホールの底まで削れば綺麗になりますから、ど根性でがんばってください!
      ブレードの仕上げは努力が必ず報われる工程です!

  3. lure-builder より:

    ご返答ありがとうございます!
    お言葉を励ましと捉えがぜんやる気が出てきました。

    熱処理の依頼をさせていただくと思いますので、その節はよろしくお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です