「面がダレる、ハマグリになる」フラットグラインドの壁を越える。あえて『ワークレスト×フリーハンド』で削る
お預かりしたブランクのブレード研削をご依頼いただきました。 今回のミッションは、「シンプルな魚裁き用ナイフを、フラットグラインドで削る」こと。言葉にすれば一行ですが、ナイフメーカーの方なら、この「フラット(平面)」という言葉の重みがわかるはずです。
ホローグラインドにはない「緊張感」
正直に告白すると、ホローグラインドに比べて、フラットグラインドは圧倒的に神経を使います。ベルトの回転に対し、少しでも力加減や角度がブレてしまえば、一瞬で面が崩れてしまうからです。
- 押し付けすぎる → 鎬(しのぎ)のラインがうねり、コントロール不能になる。
- 弱腰になる → 面がヨタヨタしてしまい、意図しないコンベックス(ハマグリ刃)になってしまう。
「ビシッとした平面を出したいのに、気づけば丸まっている」 、見せた人に「蛤刃?」みたいな顔をされてエヘヘ…と照れ隠し。そんな経験、皆さんにもありませんか?
治具(ジグ)か、己の腕か
この問題を解決するには「ブレード固定用の治具(ジグ)」を使うのが最も確実です。正確な作業のために治具の活用は絶対効果的。しかし、今回のナイフのような形状の場合、治具のセットアップがかえって邪魔になり、自由なラインが出せないこともあります。
「願わくば、自分の腕一本で解決したい」
これはナイフメーカーとしてのエゴかもしれませんが、技術の引き出しを増やすためには避けて通れない道でもあります。治具で品質を安定させるのも正解。腕を磨いて応用力をつけるのも正解。 どちらのアプローチも選べるのが、ナイフメイキングの本当の面白さだと私は思います。
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今回の「解法」:ワークレストという支点
そこで今回採用した作戦は、「ワークレスト(置台)を使ったフリーハンド研削」です。
完全なフリーハンド(空中戦)ではなく、置台という「支点」を作ることで、手元のブレを最小限に抑えつつ、ナイフの動きを制御します。 特に今回はブレードバック(背中側)がストレートな形状だったので、このガイド役として最適でした。

結果、狙い通りビシッとしたフラット面が出せました。 この面がピタリとベルトに吸い付く感覚は、何度やっても痺れる瞬間です。
道具と技術の共犯関係
今回はこの削り上がりの状態でお客様にお返しします。ここからの熱処理、そして仕上げはお客様自身の手で。 バトンタッチした素材が、どんな美しい一本に仕上がるのか楽しみでなりません。
もし、あなたが「フラットグラインドが上手くいかない」と悩んでいるなら、一度ご相談ください。 削り方のコツはもちろんですが、新品のベルトに変えるだけで、嘘のように面が決まることもあります。
良い研削は、良いベルトから。これだけは間違いありません。
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