片刃フラットグラインドの作業工程紹介
今回は片刃のフラットグラインドというご注文なんですが、ひとつ難しいところがありました。それは鎬(しのぎ)の形状。ふつうはブレード全体を削るだけでいいんですが、手渡されたブランクにはメインベベルが徐々に広くなる感じのイメージが描かれています。
この手の変則的なブレード形状の場合、ワークレスト(置台)を使うのが難しいので、全てフリーハンドで削ることにします。
普通のナイフもそうですが、ベベルと立ち上がりの部分を別のパートとして考えて研削していきます。
先ずはベベルを削っていきます。これはいつも通りのナイフとあまり変わりません。そして、緩やかに長い立ち上がりは慎重に前から様子を見ながら削っていきます。徐々にひねり上げていくような感じで、約2㎝くらいずつ進めていきます。
立ち上がりの部分は角度を調整しながらバイクのアクセル調整のように手を回転させて削っていきます。とはいえフラットグラインドなので、ブレードとベルトサンダーのプラテンが密着するように気を使います。
一旦削り終わったのがこちら。立ち上がりの稜線が少し直線になってしまったのが悔やまれるところですが、最初に頂いたブランクに描かれていたイメージに近く削ることが出来ました。
うまく削れたとはいえ、ここから研削痕の研磨と面出しを手作業で行います。
耐水ペーパーの#120くらいの粗い番手から磨き、#400まで研磨しました。これであとは熱処理を施して納品できる状態になります。
一般的に片刃のものは熱処理の時に曲がりやすい傾向があります。
今回はブレードが長い片刃なので心配でしたが無事に曲がらずに熱処理から帰ってきてくれました。
もし熱処理で曲がりが発生したら、叩いて直すか、さらに削って修正する必要があります。
薄くて長い刃物の場合は焼き曲がりのリスクは避けられない現実です。今回はブレードをきちんと磨いたことと、大きな力をかけずに徐々に削ったこと、緩やかな立ち上がりでブレードの根元部分が厚くなっている構造、熱処理前に研磨をしたことが良い影響になったのかもしれません。
この片刃フラットグラインド、削ってみたら見た目もカッコいいので自分用のものも一つ欲しくなりました。余裕があるときにまた削りたいです。