1本のブランクが届きました。このナイフにハンドルを付けて欲しいという依頼。
ブレードはほぼ出来上がっていて、あとはハンドルを付けるだけ…という感じに見えますが、タング部分を見るとブレードからつながるように少し削られていたりして、大変ハンドルが取付けにくい構造です。

ブランクを見ながらしばし途方に暮れた後、結局コンシールドタングにすることに決めました。
ざっくりとしたイメージは下の写真のような感じ。タングを細く加工して、テーパーになっている部分は削り飛ばしてしまう。ヒルトを取り付けて、ハンドルで鋼材を挟み込むような感じにしていくことにします。

ブレードからつながるななめになっているところは全て削り飛ばして、コンシールドタングにするという計画で進めていくことにしました

今回のプロジェクトは以下の通りで進めていくことにしました。

1.ブレードのタングを削り、コンシールドタングにする

2.ブレードの錆を落として、エッチング処理

3.ヒルト製作と取付け

4.ハンドル製材

5.ハンドル取付・加工

6.シース製作→完成!

1.ブレードのタングを削り、コンシールドタングにする

タングの削り出しはバーキング(ベルトサンダー)で行いました。
全体に焼きが入っていたのでヤスリなどでは歯が立たないため、基本的には機械力で削り落としていきます。ヒルトとの接地面は多少精度が必要なのでダイヤモンドヤスリを使ってヤスリ掛けをして削っていきました。

2.ブレードの錆を落として、エッチング処理

炭素鋼は油断するとすぐ錆びます。梅雨時期なんかは放っておくだけでぽつぽつと錆が浮いてきてしまったりします。保管している間にすこしくすんできたのと、小さな孔食が見られたのでまずはさび落としと磨きを行っていきます。

ブレードの磨きはいつもの通り、耐水ペーパーをつかって根気良く仕上げていきます。
最終的に#2500までペーパーをかけたらダイヤモンドペーストでミラーフィニッシュまで仕上げます。

仕上がったブレードがこれ。無事に錆も取れて鏡面に仕上がりました。
角度によっては積層模様も楽しめるし、なんかもうこれはこれでOKな気もしますが、とりあえずはお預かりした時の原状復帰をめざすので、ここからエッチング処理を施していきます。

積層材のエッチングには「塩化第二鉄液」を使うのが一般的です。
腐食液を平たいパッキンのなかに出して、ナイフをドブ漬けします。
本当は縦長のペットボトルのようなものに入れるのが理想的だと思いますが、それほどシビアな作業ではないので横向きに置いてしまっています。

ものの数分で腐食が進み、サーっと色が変わっていきます。

エッチング処理が終わると迫力ある積層模様が現れ、心金は黒く変色しました。なんかちょっと前に流行った鬼滅の刃の日輪刀のような迫力です。このままでも十分カッコいいのですが、バフ掛けをして全体を磨き上げていくことにします。

エッチングしたブレードをバフ掛けして研磨。なんとなく日光の下で。
バフをかけることで艶と模様が程よく現れて理想的な色味になりました。

ヒルトを取り付ける前段階まではこれで終了。
次回からはヒルト、ハンドルを取り付けナイフの形に加工していきます。

つづく

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