壊れたハンドルを直したときに気づいたこと
不運にもハンドルが割れてしまったナイフ。大事なものなので直して使いたいということで相談を受け、お預かりすることになりました。
相談を受けた時点で写真で確認していたのですが、以下のようにハンドルの片側がパッカリと外れ、ボルトも折れてしまっていました。現物を確認してみると外側のウッドとスペーサーが剥がれていることが分かりました。
接着面の「足付け」
まずは剝がれてしまった部分に残った接着剤をしっかりとこそぎ落とします。これがポイントで、接着剤の残りを剥がさずにそのまま付けてもはがれやすいままになってしまいます。ですから、きちんと洗浄し、それでも残ってしまったものはカッターなどを使ってすべてきれいに落とします。
接着剤を剥がして気づいたのは、スペーサーはG-10が使われていたのですが、表面をそのままつかっていたこと。接着性をよくするためには表面を適度に荒らしす「足付け」をしないといけませんが、それがされていませんでした。
今回は耐水ペーパーでハンドルとG-10、両面をしっかりと荒らして再接着するようにしました。サンドブラストで足付けすることもできます。
接着をするときはエポキシ接着剤を使用します。今回使用したのはMatrix-AIDAでも販売している ハンドル用接着剤 MX-91。大変強力な接着剤でナイフハンドルに最適です。エポキシ接着剤は効果まで時間はかかるものの、接着力は強く、衝撃にも強い。しかも質量を持って硬化するので隙間などを埋めるのにも最適です。
無事に接着が終わったら、次の工程はハンドルの研磨。
隙間からはみ出すように余分に塗布した接着剤の硬化を待ち、ハンドルを磨いていきます。磨くといっても元々のハンドルの形状を乱さぬよう、前の目の傷消しだけを意識して磨いていきます。
耐水ペーパーを水を使わずに使用して、荒い番手から順にかけていき、最終的に#2500まで手磨きを行いました。
手磨きを終えたら、今度はバフ研磨で艶出しを行っていきます。バフをかけ、最終的に亜麻仁油を塗布して無事に元通り。下の写真の通り、継ぎ目が全く分からないくらいになりました。
今回、ハンドルを接着するときのタングやハンドル内側の「足付け」、ほんのひと手間なんですが、納品後にユーザーさんを困らせないようにするために、必ずやるべきということを学ぶことができました。