ブレードショーでみられたビジネス的取り組み
お客として楽しめるナイフショーも、すこし視点を変えてショーを見てみると、ビジネス的感性を養う上でとても参考になりました。そして、日本のナイフマーケットが学ぶべき取り組みが多く見られました。今回はそんな事例を記録します。(僕自身のための備忘録的記事でありますが、お付き合いくださいませ)
ブレードショーで圧倒的な人気を誇るトニー・ボーズ、リース・ボーズ親子。この2人のナイフを買うにはこの写真のように自分の名前を書いた紙をほしいナイフの前において抽選に参加しなければいけません。もともと人気があるから必然的に生まれたシステムなのでしょうが、名刺の山が高くなれば高くなるほどいろんな人が興味を持っていき、どんどんとエスカレートしている印象です。どんなにオーダーを抱えていても、このブレードショーのために必ず新作を作ってくる律儀さも人気を維持する大切な要因かもしれません。
クレジットカード決済を導入しているメーカー、ディーラーが多く見られました。海外から来ていた僕は、できるだけ現金を持ちたくないし、使いたくないのが本音でしたから、カード決済ができるのはかなり大きなメリットだと感じました。ちなみに僕が購入したところで利用していたのは、SquareとPaypalでした。いずれもメールで領収書を送ってもらうことができましたので、安心して買い物が出来ました。銀座ブレードショーなどを見ていると海外のお客様も増えていますから、日本のナイフメーカーにはいち早く導入することをおすすめします。
これはオープンビッドという販売方法。写真のようにテーブル上で競りを行っていくのです。オークションの終わりの時間だけが決まっていて、欲しい人が競り合って徐々に価格が釣り上がっていくという販売方法です。これに対してシークレットビッドといって価格を公開しないで競りをする方法もありました。日本の市場に向いているかはわかりませんが、ナイフメーカーからすれば自動的にナイフの単価を上げることのできる効率よい方法といえますね。
写真をみると2人で競り合っているのがよくわかりますw
ブレードショーは展示販売だけではなくて、ブレードショーユニバーシティというナイフメーキングに関する講座を行っていました。ナイフのデザインやイングレーブなど魅力的で多彩な内容の講座が数多く行われています。このような積極的な後進の育成は、効果が出るまでは時間がかかるものの、最終的にはマーケット拡大に大きく貢献するのではないでしょうか。
ABS(American Bladesmith Society)は、会員を募集するのと同時にダマスカスの作り方などの教則本やハウツーDVDを数多く販売していました。技術を公開することで組織自体のレベル向上を図っているようです。一子相伝とは対極的で、技術公開による後進の勧誘と育成は、後継者不足にあえぐ日本の産業が見習うべき姿勢なのかもしれません。
SNSが活用されていました。Blade Showのfacebookページやtwitterがショーの最中も随時更新されていきますし、個々のナイフメーカーやディーラーもfacebookに情報を随時上げていました。SNSを活用してショーの最新情報を提供してファンを煽り、集客につなげていく仕掛けは大いに学ぶべきところでありました。
顧客の購買意欲をそそる販売方法や後進の育成、マーケット拡大や組織のレベル向上につながる仕掛け、SNSなどの積極的な利用。こういった優れたビジネス的感覚はとても勉強になりました。今回挙げた中だけでも、日本のマーケットで真似できるとこはありそうだなと感じました。