2020年10月17日~18日にかけて、第41回JKGナイフショーが時事通信ホールにおいて開催されました。これまで経験したことのないコロナ禍でのイベント開催については様々な変化と適応が求められました。


 今年の2月ごろから新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し、5月には緊急事態宣言が発令。当然、日本全国のナイフショーは軒並み中止せざるを得ない状況に追い込まれました。
 6月頃には徐々に経済活動が再開。ちょうどその頃からJKGでは本格的にショー開催に向けての対策を模索し始めます。リモート会議などを駆使して、コロナ禍での開催に当たっての問題点に対する協議と対策立案を行い、8月31日にJKGは開催を決断。前述の通り今年10月、無事にショーを終えることができました。


 アフターコロナのショー運営はもちろん、これからもこれに代わる他の天変地異や災害がいつ起こるとも知れず、そのたびに状況の変化に適切に対応していかねばなりません。今回無事にショーを終えることができたからといってこれで「良かったね」で終わりにせず、今回JKGがコロナ禍の状況下でのナイフショー開催に向けて行った施策などを今後の資料として、個人的に記録しておこうと思います。

§1 事前準備

1-1.リモート理事会

  • 緊急事態宣言後、理事会はメールでやり取りをしていた。しかしお互いのレスポンスが悪く遅々として議論が進まなかった。そのため、7月からはGoogle Meetを利用したリモートでの理事会開催となった。これによって飛躍的に議論が進むようになった。
  • 開催に向けての課題を書き出し、Google Docsで一覧化。理事内で問題点を共有できるようになった。
  • この記事の引用元はJKGのWebサイトの議事録です。出展元は下記リンク参照のこと。(JKGホームページ

1-2.イベントの中止

  • 本来の目的であるナイフショーだけでも確実に開催できるようにするため、小イベントは中止になった。
  • 中止したのは、ベスト・イン・ショー選定、JKGナイフコンテスト、来場者プレゼント、表彰式、懇親会、集合写真撮影。
  • 小イベント開催時における客同士の接触や、ガラスケース周辺で密集などが予想されるため、三密を避けるための施策だった。

1-3.海外メーカーのキャンセル

  • 早い段階で海外メーカーの入国は難しいと判断し、今年は海外からの参加は一切受け付けないこととし本人や代理人に通知した。

1-4.会場のガイドラインの確認

  • 時事通信ホールのような大きな催事場の場合は、国などのガイドラインに従った感染拡大防止のためのガイドラインを設定している。まずそれを確認して遵守することにした。

1-5.ソーシャルディスタンス計画

  • 会場の広さと出展者数、テーブルレイアウトによって来場者同志にどれくらいの距離が保てるのかを試算(下記図面参照)。
  • 会場内の最大収容人数は160名。出展者数と来場客数の総数をコントロールする必要性について話し合われ、対応策や人数設定を協議した。
  • 結果として出展者が少なくなったため、特に入場者数のコントロールは必要はなくなった。

1-6.出展希望確認を2度行う

  • 例年の出展募集期限の7月末の段階では例年通り40名超の出展希望があったが、感染者数の動向や健康面や社会的不安によって出展者が突発的に事態することが予測できた。そこで8月15日を期限として、参加希望者に対して再度出展の意思確認をした。
  • 結果、出展者数は20名に激減した。(その後、コロナとは別件で2名が欠席。ショー開催の際に出展者は18名となった)

1-7.開催決断のタイミング

  • 会場のキャンセル料発生のタイミングと開催決断のタイミングを合わせた。
  • 1か月前までにキャンセル申請しないと会場使用料を全額の支払うことになる契約であったため、正式決定はショー8月末(ショー1か月半前)となった。
  • 少し前倒しにしたのは、遠方から参加する出展者が飛行機やホテルのキャンセルをする猶予期間をもたせるためでもあった。

1-8.テーブル料金の徴収について(後払いに変更)

  • 状況が刻々と変化している時期での開催計画だったため、2度の出展希望をとったものの、突然出展を取りやめる出展者もいる可能性があると考えて、通常のテーブル料金の先払いはやめ、ショー終了後に請求する形になった。
  • 急遽キャンセルになったとしてもキャンセル料の返金の手間がないこと。いつだれが感染するかわからない中での特例的措置。

1-9.理事の出展取りやめ

  • 円滑なショー運営のため、理事については消毒や準備、トラブル対応が迅速できるように出展を取りやめることになった。
  • ディーラーテーブルとしてMatrix-AIDAが出展し、理事数名のナイフを委託販売した。

1-10.総会の委任状

  • JKGの総会はナイフショー2日目の朝に行われるのが定例となっているが、今回は出展者数が少ないため総会出席者が例年よりも圧倒的に少ない。
  • 出席できない会員の方が多いため、総会の議決に関する委任状を提出してもらうこととした。
  • 事前に総会議案同封の上、委任状のハガキを送り、記名の上、返送してもらうようにした。

§2 現場での対策

2-1.受付業務の委託

  • 時事通信ホールのスタッフに外部委託することにした。これまでは出展者の近親者や知り合いに依頼していたが、検温作業や来場者への対応がこれまでよりも煩雑になることと感染リスクを考えた。結果として、トラブルなくスムーズな誘導が行えていた。
  • 受付担当者が最も多くの来場者とやりとりがあるため、受付には市販のアクリル製パーテーションを用意した。

2-2.入場者アンケート

  • 会場のガイドライン等に従って作られたアンケートを出展者、来場者全員に実施。万が一クラスターが発生した場合の措置として住所、連絡先、入場時の体温も記入してもらった。これはショー終了後2週間保管して、何もなければ廃棄する。
  • アンケート用紙のPDFをWebサイトからダウンロードできるようにして、来場予定の方には事前に印刷、記入したものを持参できるように配慮した。一定数の方が事前に印刷したものを用意していた。スムーズな入場に効果的だったように思う。
  • 記入用の鉛筆は共用を避けるため使い捨てのものを用意。記入したものは持って帰ってもらうようにした。

2-3.検温

  • 非接触検温器を2台準備。
  • 測定時間が短く、価格の安さよりも信頼できるものを重視して機種を選択する。

2-4.消毒

  • 手指用アルコールを受付・出入口に設置し、全来場者に入場前の消毒を促した。再入場の際も消毒する。
  • 1時間おきに受付のテーブル、カレンダーの配布場所、トイレの洗面台等を設備用アルコールで消毒した。はじめは30分おきに消毒する計画だったが、現場での人の流れが緩やかだったため1時間おきに変更した。
  • 手指用アルコールを3本、設備消毒用アルコールを2本準備したが、量はこの程度で十分だった。
  • テーブルなどの消毒はキッチンペーパーで行って、拭き取り後ペーパーは廃棄することとした。

2-3.手袋

  • ナイフを触る際に、万が一感染者がいた場合、間接的に接触してしまう可能性があるため、来場者全員に手袋を無償で配布した。来場者のほぼ全員が協力的で、会場内のマスク、手袋着用率はほぼ100%だった。
  • Mサイズ(300枚)とLサイズ(100枚)を用意したが、実際やってみると来場者は成人男性が多いためLサイズの方が需要が多く初日で足りなくなってしまった。そのため1日目終了後にLサイズを追加購入することとなった。
  • 手袋は粉が付いたりしないニトリル製のものを選んで購入した。

2-4.マスク

  • 入場者にはマスク着用を義務化した。万が一マスクを忘れた方やしない方が来た場合のために予備マスクを準備していた。
  • 来場者のモラルは高く、会場内のマスク着用率は100%だった。

2-5.フェイスガード

  • プラスチック製のフェイスガードを用意した。これは結局使用しなかった。

2-6.換気

  • 時事通信ホールに事前確認。「時事通信ホールでは興行場法に基づいて設計されているので新型コロナウイルス対策においても外気との十分な換気能力がある」との回答を得たため、窓を開けて換気するなどの必要はなかった。他会場の場合は、一定時間ごとに換気するなどの方策が必要になる可能性がある。

2-7.テーブル1人規制

  • 出展テーブルについて、原則として1テーブルに出展者1名だけがいるようにしてもらった。これも密集状態を避けるための方策。
  • 特別な理由のある方は例外的に複数の出展者がいることもあったが、基本的にはほぼすべての出展者が協力してくれた。

2-8.弁当配布

  • 出展者がみだりに席を立ったり、外出する必要がないようにするため、昼食とお茶を配布した。
  • お弁当の配布時間はショー開始前の10時半ごろとした。

§3 購入品リスト

今回のナイフショーの開催に当たって購入した物品は以下の通り。

  • フェイスガード 16個
  • マスク 60枚
  • 手指用アルコール 3本
  • 拭き取り消毒用アルコール 3本
  • キッチンタオル 4ロール
  • 非接触体温計 2本
  • 手袋 400枚
  • 使い捨て鉛筆 200本
  • アクリルパーテーション 2セット

§4 今後の課題

4-1.受付などのスタッフ確保

  • 今回は理事の方々がテーブルを放棄してナイフショーの運営に回るなど、その献身的な努力によってショーが運営できた。
  • 本来、運営側は運営だけを専任してやるべきではあるが、多くのナイフショーは運営側もナイフメーカーであることが多いため、今回のJKGのようなやり方ではメーカー内で不公平が生まれてしまう。
  • コロナの影響を受けている間は、受付業務や消毒業務を外部委託したりボランティアを募集するなどの必要がある。

4-2.コスト高騰

  • 大きな額ではないものの、非接触の体温計や消毒品のもろもろなどの消耗品の手配と維持管理が必要になる。
  • マスクや手袋のゴミも多数出るため、会場との連携を怠るとゴミ処理を巡って問題になりうるかもしれない。

4-3.オンラインへの対応

  • ショーを開催できたとしても、体調不安があり上京できない方や日程的に都合のつかない方も多い。
  • ショーと同日程でオンラインショーを開催するなど、オンライン、オフラインの両方でショーを運営することができればメーカーとしては販売するチャンスが増えるし、顧客側も時間と場所に縛られずショーに参加することができるためメリットが多い。
  • しかし、これについてはシステムの構築や、それにかかわる技術者やルール作りが不可欠になる。今後の大きな課題と言える。
  • 今回ショーを開催してみて人がリアルで集まることの意義やそれが生み出す熱量を再確認したのも事実。オンラインだけを推進するのではなく、オンラインはひとつの販売チャネルのオプションとして考えるべきだと思われる。

4-4.ナイフショー以外のイベントのやり方や方向性についての検討

  • ショーに付随するコンテストや表彰式、来場者プレゼント、懇親会などを今後どのタイミングで復活させていくのか、あるいは枝葉の部分は削り、純粋なショーにしていくのか、そういったことを再考する時でもある。
  • 個人的には後進メーカーや新たな才能の発掘としての機能を持つナイフコンテストは開催方法を模索してぜひとも続けていってほしい。

4-5.出展者数の確保と会場選定

  • 今回のJKGナイフショーは赤字。これは出展者数の激減がもろに影響してしまった。出展者数と会場の規模が合わなければショー開催の採算は取れない。
  • 出展者数と会場規模、そして会場の品質(立地や衛生面の安全性など)を総合的に鑑みてショーを運営していかねばならない。
  • コロナ禍が続いた場合、高齢の方や持病のある方、遠方の方などが直接参加できず、出展者数が確保できないことも考えられる。オンラインと連動して参加費を徴収し会場費を捻出するなど、総合的な判断が必要になるかもしれない。

§5 まとめ

 コロナ禍でのナイフショーを開催するにあたって、お客様が来てくれるのか、安全性を確保できるかなどの懸念は数多くありましたが、結果として2日間で合計約240名の集客を達成し、出展したほぼすべてのナイフメーカーが販売できたり、新規オーダーを受注していました。そしてなにより、2週間経って一人の感染者も出すこともありませんでした。まさに今回のJKGのショー開催決定は英断であり、国内のナイフ関連イベントとして大成功であったと言えます。

 良くも悪くも今回の新型コロナウイルスの影響により、世のあらゆるものの「あり方」や「存在価値」が問われることになりました。なんとなく前例主義的に続けていたもの、人の善意や好意に乗っかっていただけのこと、そういったことのメッキがはがれて一気に変化することが求められているように思います。

 今後、ナイフショーが価値のあるものであり続けるためにも、過去のやり方やルールに固執することなく、しなやかに変化し状況に適応していく必要があります。

 この記事がカスタムナイフ業界の発展とコロナ後のナイフショーの再生に向けて誰かの参考になれば幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です