前回の続き。


ヒルトを取り付けます。
正式にカシメる前に、仮のピンを入れて完成の形状まで整えます。ハンドル全体の厚みがヒルトの厚みに依存するので大切な工程です。

ヒルトの形状がほぼ決まったので、ヒルト用接着剤を塗り、ヒルトと同素材のカシメピンを通してカシめていきます。

今回はステンレスを使用するので、カシメはできる限り念入りに「これでもか」というくらい叩きまくります。真鍮やニッケルシルバーは比較的柔らかいのでカシメやすいのですが、ステンレスは硬くてつぶれにくいです。部長に教わったのはステンレスの場合はカシメる前にバーナーなどでピンを熱してなますと叩きやすくなるということ。実際やりやすくなるのでぜひお試しあれ。

ヒルトがきちんと取りついたら、次はいよいよハンドルの取り付けです。
今回使用するのはスタッグ・ボーン。これは牛の骨を鹿の角のような模様に削り染色したもので、本物と見紛うほどのクオリティがあります。この凹凸は滑り止め効果もあり、ハンドル材としても優秀です。片側ずつ貼り付け→穴あけ→外形研削という作業を繰り返して行っていきます。

この状態から段付きドリルで座繰り穴をあけて、シュナイダーボルトを締め込みます。

あとは、露出している部分を削り落としハンドル材の高さまで削り、段差がないようにしていきます。

ハンドルを削るときは「Jベルト」を使用しています。柔らかい素材(木材やマイカルタなどのハンドル材)と相性が良く、たわみなどを利用するとイメージ通りの形状に削っていくことができる素晴らしいベルトです。

おおよそ完成に近づいたので、あとは手仕上げとバフ研磨で最終的に磨き上げます。
名入れをして、刃付けをして無事完成です!

シースはベルトループをなるべく長くしてほしいというご要望だったのでそれに合わせて製作しました。

無事納品したのち、お客様から下記のような大変ありがたいメールをいただくことができました。

祖父は早速仕事でナイフを愛用しております。

ほぼワンオフという事もあり、ここまで自分の手に合ったナイフで作業ができるのは幸せと祖父が仰っております。

また、仕上がりが大変美しく、切れ味も良く見事なナイフに感動しております。

この度は大変お世話になりました。ご多忙の中制作に尽力してくださり感謝申し上げます。

無事納品出来て安心したのもそうですが、自分が作ったナイフがまた新たな価値あるものを生み出しているというそのサイクルがとても誇らしく、うれしい気持ちになりました。

刃物には、ともすれば何かを傷つけるなどマイナスなイメージがあるのも事実ですが、本来はこのように人間の暮らしを豊かにし、新たな創造物を作り出す手助けをしてくれる、この世の中になくてはならないものだと思うのです。だからこれからも誇りをもってカスタムナイフの世界を楽しんでいきたいと思います。

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