「祖父から受け継いだ剣鉈が錆びてしまったので、できる限り綺麗にしてまた使えるように」という相談を受けました。とりあえず見せてもらったのがこれ。

全体的に錆が進行していて、刃もところどころ欠けている状態です。最初はすべて手作業で研磨して落としていこうとしましたがあまりの錆の根の深さに根負け。ベルトサンダーでリグラインドをすることにしました。ブレードのフラットを壊さぬよう慎重に削って錆びをすべて取り除きました。取り除いたのが下図。

無事にグラインドを完了して、綺麗な刃物に戻りました。ただこれで完成ではありません。ここから、ひたすら地道に耐水ペーパーで グラインドの傷目を 磨いていきました。今回お預かりした鉈はことのほか摩耗に強く、磨き上げるのには苦労しましたがなんとか無事に磨き上げることができました。磨き終えた後、美しい波紋が浮き出てきたときは少し感動しました。

錆びの大きな原因は、おそらく木鞘に入れっぱなしで放っておかれていたこと。
見てみると木鞘の中にも錆がこびりついていて、また同じ鞘に戻したりすると、もらい錆してしまって元の木阿弥になってしまいます。というわけで、依頼主ご希望のカイデックスで新しいシースを作りました。

なるべくコンパクトになるようにシースは折り畳み型の形状にしました。ベルトループは別パーツで後付けできるように。これを外してテックロックを直付けできるようにもしてあります。刀のように左腰につけて対角線上に鉈を抜けるようにしました。

個人的に、この口金が多面体ですごくかっこいいと思ったので、わざとチラ見せしてみました。この角度のシルエットがお気に入りです。

作業終了後、ご依頼主にお返しして今回の鉈のリストアは無事に完了。お見せしたらとても喜んでいただいて「これから惜しげもなく使っていきます」と言っていただけました。 おじいさんから譲り受けた襷を今の時代に繋ぐ手伝いができたような気がして、とてもうれしい仕事でした。

刃物は一回錆びてしまっても、このように削りなおして丁寧に磨き上げれば元の役割を取り戻すことができます。ぜひあなたも古びたナイフや鉈を見つけてもすぐに捨ててしまうのではなく、再び命を吹き込んでみてはいかがでしょうか。

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